ハンドメイド委託販売で気を付けるべきたったひとつの心がけ
委託販売でハンドメイドを販売して4年。
「ハンドメイド 委託販売」と調べると「やめた方がいい、おすすめしない、売れない」など反対の声が多い中、あえて委託販売のススメのような記事を書こうと思います。
それは趣味でモノづくりをしていた私がハンドメイド品を販売した初めのきっかけが委託販売だからです。
心掛けている事、失敗したこと、実際にお店の売り場を目にして発見したことを踏まえて、私なりに店舗で委託販売するときの注意点をまとめてみました。
どこかの誰かの参考になれば嬉しい限りです。
委託販売で気を付けること
委託販売とは
簡単におさらいですが、委託販売とは自分が作ったものをかわりの誰かに販売してもらうことです。
作家にとってのアピールの場であり、販路拡大であることには違いはありません。
ですが、作品を預かってもらい、管理してもらい、販売してもらうということを忘れてはいけないと思います。
これは店側を敬えということではありません。
どちらが偉いという事もなく、どちらかがへりくだる必要もありません。
こびへつらったり、気に入ってもらおうとすることは必要ありません。
作家がPR効果や売り上げを得るかわりに、販売店も手数料を得る。
ここではお互いが納得した条件下で一つのビジネスが確立しています。
その中でお互い気持ちよくやり取りができるよう、念頭に置いておきたい心がけはひとつ。
相手とのやりとりをスムーズに運ぶための「親切さ」です。
ではその「親切さ」とは具体的には何か?
まずは、相手の立場に立って考えてみます。
販売者の目線で考える
作家から商品を受け取り、お客様の手に渡るまでの工程を思い浮かべてみてください。
イベントで販売の経験がある方は少し想像が付きやすいでしょうか。
実際にはその日限りでイベント販売するときよりも、様々な仕事があります。
お客様の目線で考える
ショップでお客様が買い物をする様子を想像してみてください。
これは、雑貨店などでショッピングの経験があればすぐにイメージがつくと思います。
ですが、店内の環境やお客様の年齢層によって、想像できないような問題をかかえていることがあります。
では具体的に、自分の手を離れた作品がお客様に届き、そしてその代金を得るまでの流れに沿って、どのようなことが親切かを考えていきます。
※ここでは遠方に郵送で委託商品を送る場合を書きます。
作品が自分の手から離れてお客様の手に届くまで
納品時のことを考えた親切さ
特にメール便などポストに投函される発送方法は、必ず相手の手元に届く前に発送連絡をします。
「昨日送りました」というメール連絡は、商品到着と同時かそれより遅い可能性があるので、必ず発送前に日時を告げるか、発送直後に連絡します。
宅急便の場合でも、いつ頃誰の荷物が届くかがわかる方が、お店も安心です。
予定に無い荷物は現場の混乱を招きます。
そのお店が沢山の作家とやりとりをしていたり、店員が複数いるような場合は特に注意したいです。
同時に、在庫管理のことを考えて外箱に作家名を大きめに記すといいかもしれません。
検品のことを考えた親切さ
委託先に指定が無い場合でも必ず納品書と品番がはっきりとわかるようにします。
納品書の品番と価格が、実際の商品の値札と一致するようしっかりと確認します。
梱包時、できる限り通しの番号で並ぶよう梱包します。
アクセサリーなどの場合、エアキャップやミラーシート、ジップ袋などで梱包しますが、このときいくつもの商品を一緒にくるんではいけません。
試しに、一度梱包した箱を軽く閉じ、そのまま振ってみてください。
品番通りに並べたことが無駄になるだけでなく、ネックレスなどの絡みやすい商品は中身が乱れて一つ一つを取り出すことが大変になります。
ワレモノは必ず一つ一つ丁寧に梱包し、ワレモノどうしが触れ合わないようにします。
いくら梱包材を箱の中に詰め込んでも、食器を重ねてくるんでいては意味がありません。
ガラスや天然石など傷つきやすい商品も同様です。
陳列のことを考えた親切さ
納品する商品を実際にディスプレイしてみてください。
パッケージされた商品の場合、並べたときの安定性はどうでしょうか。
スタンドに立てかけにくい。
平置きしたとき商品が傾きやすい。
商品に対してタグが大きすぎる。
値札は陳列する間中、問題のない状態でしょうか?
多くの場合契約期間は1日や2日ではないので、数日間沢山の人が持ったり運んだりすることを想定します。
細い糸でタグ付けしている場合は陳列中にほどけたり抜けたりすることがあります。
剥離シールで値段をつけている場合、一度貼りなおしたシールはカールして売り場で剥がれやすくなります。
SNS発信を考えた親切さ
多くのお店がSNSによる宣伝を行っています。
SNSに必要な情報は何でしょうか。
写真を使うお店が多いので、写真を取りやすい状態にしておくと親切です。
これはアクセサリーやベビー用品に限ることかもしれませんが、商品がビニールの袋に入っていると写真が撮りにくいです。
剥き出しの物を1点、見本品として添えるか、難しい場合は納品書に「開封可」と書くと、袋から出すことができます。
(写真を取りやすいだけでなく、陳列時にお客様が素材感を確認できます。)
お店の人が開封する場合、元の状態に戻しやすい袋であることが親切です。
粘着部分が避けてしまう弱い袋は使わない方が安全です。
接客を考えた親切さ
お店は作品のすべてを知りません。作家の想いも知りません。
目の前にある商品と納品書に記載された情報、過去の納品からの推測などを頼りに商品の売り込みをします。
そして納品書の情報は、スタッフ全員が把握しているとは限りません。
商品について、あるいは作家についてお客様とお話になったとき、少ない情報で話を盛り上げてもらえるでしょうか。
これは私の好みかもしれませんが、実際に接客を受けるとき店員の方が話す内容で商品の魅力は随分違って見えます。
例えば私の主観かもしれませんが、
店員の
「私これすきで~~」「かわいいですよね~~」
という言葉に、私の心は動きません。
それより
「こんな方がこんな想いで作られているそうですよ」
「普段はこういった活動をされてますよ」
「〇〇という技法で作られていますよ」
という話の方が、内容に共感できれば魅力を感じます。
店員がその商品を好きかどうかは、よほどその店員と仲良くない限りあまり知りたいことではありません。
むしろ手作り品を好んで買う方の中には、他人と同じでありたくない方もいると思います。
話を盛り上げてもらうには、ショップ側に作品や作風、作家についてを知ってもらう必要があります。
ですが、たくさんの商品を取り扱うお店ほど、その一つ一つを把握しておくことは難しいでしょう。
ですから、商品そのものを見たとき売り場で確認できる状態であれば問題ありません。
その商品の用途がはっきり分かりますか?
その商品の素材が一目で分かりますか?
天然石は何という石ですか?意味はありますか?
その商品のセールスポイントや技法が伝わりますか?
お手入れが必要な商品は、その方法が書かれていますか?
そんなこと全部いちいち個別に書いていられませんか?
例えばブランドカードを作って「お買い上げのお客様にお渡しください」と頼むのも良いかもしれません。
ですが、それはお買い上げ下さった方にしか伝わりませんし、店側の手間が一つ増えるので親切ではありません。
ブランドカードを商品と一緒に売り場に並べてもらいますか?
レンタルボックスならそれでもいいかもしれません。
作家ごとに陳列ゾーンが分かれていないお店の場合、自分の商品がおかれる場所に必ずお知らせが置かれるとも限りません。
何より、商品を手に取ったその場で確認できる方が親切です。
販売員の方から教えて頂いた私の失敗談です。
私はイラストを使って商品を作っていますが、商品によっては既成のテキスタイルパターンを貼り付けただけだと思われることがあるそうです。
お客様はその商品がイラスト作家によるものだと思って見るとは限らないし、折角のセールスポイントを無駄にしてしまっています。
手編みなのに既成のレースだと思われたり、手染めなのにプリントだと思われたりすると勿体ないですよね。
こだわっている部分、手をかけている部分は一言だけでも入れないと勿体ないです。
お客様の読める文字について考える(購入時の親切)
これは店員が説明をするときに親切なだけでなく、接客を受けることが苦手なお客様にとっても親切です。
ですが店員が読める文字がお客様も読めるとは限りません。
店員は文字を読もうとして読むのに対し、お客様は目に留まったものを読みます。
必要な情報を探すために読むのではなく、目立つものを積極的に読みます。
クラフト紙は雰囲気があって選ばれがちですが、年配の方や雰囲気のある雑貨店の照明では読みづらいです。
タグに一番大きく書かれている文字は何でしょうか。
作家名は後回しにして用途や素材を書いてください。
特に作家名が日本語の場合は、覚えてもらいやすい反面、商品タグび記載されたとき「?」となりやすいです。
私のような「スズメノタヨリ」という造語でない単語は注意が必要です。
これは何に使うものだろうと思っているお客様が一番に目にした文字が「スズメノタヨリ」だったらどうなるか。
スズメって?タヨリってことはこれは手紙を書くときに使うもの?
これを回避するために、タグ表記ではアルファベットで小さめに表記するようにしています。
余白が大きい場合、ブランド名と分かるようマークも一緒に記載します。
レジ作業を考えた親切さ
レジでの問題は値札とラッピングに尽きると思います。
私の委託先では商品に記載の値札を取り外して売り上げ管理をするお店が多いです。
自分のつけた値札を見てみてください。
シールの場合、小さすぎないか。はがすときに破れないか。
紙の場合、タグの根本側(切り離せない位置)に価格表記がないか。
変な位置に値段がついていると、いくらタグに商品の情報を書いていてもレジで切り離されてお客様の手に渡りません。
親切なショップは値段の部分だけを切り取り、商品説明を同封してくれているかもしれませんが、とても大きな手間です。
ちなみに、お店の管理方法にもよるかもしれませんが、個人的には紙よりシールが親切かと思います。
レジで手だけで剥がせるシールと、ハサミが必要かもしれない紙では手間が違うと思うからです。
ですのでよほど厳密な指定がない限りシールで値段着けをしています。
これはお世話になっているお店に直接聞いてみるのが良いかもしれません。
ハンドメイド品はしばしば贈り物にされます。
お店のテイストにもよりますが、ラッピング対応をしているお店の場合はギフトになるときのことを考えます。
価格によって他の商品と合わせ買いされることがあるかもしれません。
二重包装になると寄せ集めのようで見栄えも良く無いかもしれませんので、パッケージ商品は少し考えます。
お客様の手元で起こり得る問題
不良、クレーム対応
納品時不備が無いよう入念に確認することはもちろんですが、起こってしまうときは起こってしまいます。
万が一商品に不良があった場合の対応を考えておきます。
購入後破損の場合、購入後どのくらいのタイミングでどのようにして破損したか必ず確認します。
委託販売規約にのっとるか、自分なりのガイドラインを用意すると安心です。
ここまで「親切に」を繰り返してきましたが、何でもかんでも慈善で行うという事ではありません。
あくまで、制作者・販売者・購入者の三方が気持ちよくやりとりするための親切です。
作品の売り上げが支払われるまで
売上報告
販売店から決まったタイミングで売り上げの報告があります。
相手に確認したことが伝わる程度の返事をすると、万が一のトラブルを防ぐことができます。
売上報告は企業の自動送信メールではありません。
必ず画面の向こうにやり取りする相手がいることを忘れないようにします。
また、関わる人すべてが平等であることを忘れないようにします。
売り上げが少ないからと言って、「売れなくてごめんなさい」は言わないようにします。
それはすなわち、相手にも「売れなくてごめんなさい」と思わせることになるからです。
入金
販売店から決まったタイミングで入金があります。
これも売上報告と同様、人の手による処理ですので、入金の確認をしたらすぐに確認したことを伝えます。
まとめ
たったひとつの心がけ「親切さ」を考えることで、沢山の準備や仕事が増えます。
ですが、自分の商品を一番売りたいのは自分。
扱いを丁寧に分かりやすくすることを、惜しむ理由はありません。
「店に対して親切に」。
この部分だけが独り歩きして、「販売員には好かれろ」ということだけふれまわっている記事を見かけることがあります。
大切なのは、売りたい自分が売るためにすべきことは何か。
直接売る立場である販売者側の負担やハードルを減らすことではないかと思います。
販売店のスタッフも人間ですから、次第にやりとりしやすい作家のことを深く覚えて入れくれたり気にかけてくれたりします。
皆さんも、仕事をするとき煩わしい作業とスムーズな作業でテンションが違った経験はありませんか?
人と人とのやりとりであることを忘れずに、相手の煩わしさを軽減することが店舗委託販売のカギだと、私は思います。
写真はないようとは何の関係もないタンポポ(2017)顔彩
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